自然素材のものづくり
 地霊とエコハウス           
 自然には二つの自然があり、一つは環境としての自然、もう一つは人間の自然。
人間の自然とは健康とかすこやかな自由な心といったものです。そうして、この
二つの自然の間の調和がエコロジーの本質であって、どちらか一つが欠けても真の
人間の幸福はありえない。エコハウスとは、この二つの自然に配慮した建築のこと
をいい、その配慮に欠かせない条件として次の4つがある。
 一つ、エネルギー消費の低減。低エネルギーには、太陽熱や風や水やあるいは
再生可能なバイオマスのエネルギー等の自然エネルギーの使用。特に人間の身体
エネルギーの活用。
  一つ、その土地にある素材を活用すること。その土地にある木や草や土や石を
身体エネルギーを活用しながら建築すること。また、それらの素材をその土地の
小さな市場でまかない、大きな市場、遠い市場からなるべく求めないこと。
  一つ、もともとその土地にあった伝統的な技術や技法を持った職人と対話し、
討論を重ねながらその新しい可能性を見出していくこと。
  一つ、その土地の地霊を感じ取ること。地霊とは、その土地の持っている光や
風や雨や植物や生物の気配であり、そうした気配、気の流れといってよいものを
断ち切らないようにすること。
 建物を建てることはその土地を傷つけることであるから、その傷を癒すその土地の
自然の材料を使用すべきであり、またその土地の持つ地霊(ゲニウス・ロキ)を
感受する心が大切である。地霊というものは、われわれ東アジアでいう地水火風空の
五行の思想に通じるものであろう。われわれを取りまく宇宙(環境)は、地水火風空の
五元素の発する気のたえざる流れであり、その気の流れを断ち切らないようにすれば、
ひとはこの宇宙の元気のなかで幸福に生きられるのではないか。
 たぶん、エコロジーやエコハウスといったカッコよい言葉ではなく、地霊を感じとる
繊細な感受性が、そして小さきもの、かよわきもの、草や木や石や虫や魚や獣の声を
聴き、風や陽の光や波のざわめきに心躍る魂が必要なのだろう。
「月刊左官教室2000年12月号」より抜粋